王道

 以下の文章はMixiのほうに載せていたのですが、こちらにも少し加筆して載せておきます。ただ、感覚的な問題が多くて数字に表れない部分の話になってます。その点ご了解いただければと思います。






 蒸し暑い時期が近づいてきました。夏も本番、このへんで一つ期待作をピックアップしてみよう……というわけで、8月29日発売予定のソフト『しゅぷれ〜むキャンディー〜王道には王道たる理由があるんです!〜』(枕)に大きな期待を寄せています。王道という単語が目に飛び込んできたもので、つい気になってしまいました。

 まあ一概に王道と言っても色々あります。学園ものを王道だという人もいれば、看護婦さんやメイドさんなどが出てこそエロゲーの王道に足るという人もいらっしゃるはず。そもそも時代の流れや人、キラータイトル等によって王道の定義は刻々と変わりますし、ましてや王道が一つの作品に限定されるはずもありません。王道の定義は多分に曖昧だと言わざるを得ません。
 ここでは、王道に属する作品を王道ものとでも言えばいいのでしょうか……。王道はあくまでも根幹でしかありえないわけで、そこに色々とソルダリング(はんだ付け)をしていくからこそ、各ブランドの持ち味が表れた作品が誕生すると思うんですけどね。さて、いつまでも「王道とはなんぞや?」という議論に浴していては、迷宮入りするのは目に見えているので、ここまでに留めておきます。






 ここからは、ちょっと具体例を挙げた話になってしまいますがご了承ください。『しゅぷれ〜むキャンディー』のサブタイトルの指す王道とは、一体どういった作品を表すのかと考えますと、『To Heart』をはじめとした学園ものを想起しました。Keyさんのような感動もの(と言っていいのかな?)も今や王道といえば王道ですが、どうもそれとは違う気がしてならない。ここで枕さんの言う王道とは、“ベタな展開を含む恋愛劇”こそが当てはまるんじゃないかな、と私個人は考えています。
 そう言えば、あの頃(?)はそういったソフトが絶大な支持を得ましたよね。ベタな展開を王道と表現することには少々抵抗も感じますが、ここではおおまかにベタな展開を王道として考えたいと思います。



ギャルゲーの王道



なるほどベタな展開が揃ってます。これを見ますと、王道に与する全ての作品は、王道的展開に基づいて色々とペーストされていると言えます。ドラマでもマンガでも、こういった“お約束”の中から不特定多数が選ばれてシナリオの中に組み込まれるから、どこかで見たような展開でも飽きもせず楽しめるのかもしれません。
 時代劇が勧善懲悪もので占められているのも王道といえば王道ですが、だからこそ大衆に受け入れられます。誰も黄門様と助さん格さんが負けるのは見たくないもの。王道と正反対のスパイスは、かえって逆効果となる場合もありますね。
 「このシチュエーションはギャルゲーのお約束だけどそれがいい!!」…そんなプレイ経験をお持ちの方も、少なからずいらっしゃると思います。




 ただ、その王道もその後伸び悩んでいるのは否めないのではないでしょうか。
 HOOKさん(※)をはじめ、多くのブランドがこの意識を引き継いでいったはずなんです。ところが、平坦すぎて全く盛り上がりに欠けるシナリオや、逆に極端に上下にぶれすぎる(突飛すぎる)シナリオの二分化が進んでしまい、お約束の匙加減がうまくできてない作品(※2)が増えたと感じてます。後者に関して言えば、無理に王道と機会主義を融合させている気がするんです。デウス・エクス・マキナが頻繁に登場するのは、決して褒められたものではありません。トリッキーな作品はまた別として、私などは、デウス・エクス・マキナは王道にそぐわない場合が多いと考えてます。
 ただし、必ずしも王道ネタが不足して結果的に細くなったとは言いたくない。他の道が太くなってきて、今までの王道が横道の一本に変容しつつある、といった感も拭えないので。


 まあ、王道というのは天然物ではなく押し並べて人工物のはずですから、本来どこかのパイオニアが切り開いて出来上がるものなんですけどね。枕さんが王道を創ったという記憶は全くないんですが、新しい王道を提唱してくれるのか、はたまたかつての王道を再び活性化させてくれるのかな、と淡い期待を寄せているわけです。



 ですから、このサブタイトルが目に留まらないわけがないんです。


‘王道には王道たる理由がある’




―――らしい。何か新しいものを提唱してくれそうな気がしませんか?(バナー張ってみました。興味ある方はどうぞ。)




※・・・『_summer』を学園ものの王道として考えたため。数値では説明できない意識的な問題かもしれません。
※2・・・いつ王道が確立したのか、という議論が必要ですが、おそらくは明確な時期というのはないと思われます。