『Tears to Tiara』レビュー【参】

 約十日ぶりにレビュー関係の記事です。最近、記事を纏める機会に恵まれませんでしたからね。>QMAしてたせいだと言う(汗



 さて、Leafが『うたわれるもの』で(便宜的に)“王道的ファンタジー”を投げかけてきたことは以前にもお話しました。今日は、それをもう少し展開したいと思います。


 “王道的ファンタジー”に基づいて『Tears to Tiara』が制作されたことは、起点となった『うたわれるもの』と後発の『Tears to Tiara』が極めて近い位置関係にあることも明らかです。ただし、物語としては後者の方が洗練されており“ブレ”が少なくなっているように感じます。何より漢らしい物語ですし、読み物として大変なぞりごたえがある。
 多人数でお話を膨らませるとどうしても緞帳になりがちなのですが(幻燐とかそうですね)、この作品は終始熱いままだから飽きが来ない。「鉄は熱いうちにうて」と言いますが、その点理に叶っているように思います。つまり長所を早い段階から特化させることに成功できている。物語としてこれ以上ベストの状態を継続できるのも珍しい。ただその代償か、エロゲーとしては最悪なんです。なにぶん漢の熱い物語であるがゆえに、女性キャラクターがまるで置物のように見えますので。物語の要となった男性キャラクターは皆熱いんですが、女性キャラクターはいつまで経っても冷たいままなんですね。これは痛い。
 もうひとつ。ゲーム性が致命的どころではない。正直ツマランのです。どっちが楽しいかと聞かれれば、やっぱりみなさん『うたわれるもの』を選ぶことでしょう。『Tears to Tiara』は傭兵システムやらオートバトルやら色々と詰め込んでますが、どれもこれも小細工レベル。決定的な楽しみ・・・・・・・たとえば「レベル上げの楽しさ」やら「アイテム集め」やら「明朗なシステム」やらが搭載されてない。どうせ小手先の手駒しかないなら、余計な事はせずに『うたわれるもの』みたいに真っ直ぐを投げるべきだったと思うんです。単純だけど面白ければユーザーはついてくるんじゃないんですか?なにか間違えているような気がしてならない。
 『うたわれるもの』と似ているのに、やっぱりこっちのほうが劣っているのは何もかもがギクシャクしているせいだと思います。とくに女性キャラに全くインパクトがないことは・・・・・・エロゲーとして出してしまうなら、どうあがいても致命的な要素になってしまう。『うたわれるもの』との大きな違いの原点はそこにあります。無駄に萌えキャラ化させといて、物語と反して薄く情熱味のない濡れ場はいらない。なんでこれをエロゲーとして出したのだろう・・・『To Heart2』がコンシューマで開発されていたのが不思議でなりません。


 もっとも、“新たなスタンダード”をLeafが模索していたのならば、この『Tears to Tiara』は詮無い作品なのかも。“王道的ファンタジー”のさらなる発展を目論むぶんには構わないのですが、アリスソフトみたいに似たシステムを使うのも一つの手だと思ったんですがね。Leafだから何かしら工夫しなきゃいけない運命だったのかもしれないですね。ともかく『うたわれるもの』の跳び箱の段は今の今でも高いんですから、越えるのは至難の業のように思えます。逆に言えば、越えた時は栄光の一作となるであろう事は疑いようがないわけですが、それはなかなかに難しい。
 結局Leafは、エロかコンシューマか迷って少なからず失敗しているんですね。それ以前の問題として、『うたわれるもの』という壁を双肩を成せなかったこと、この時点で作品としての雌雄は決していました。同じ土俵に立った時点で『Tears to Tiara』に勝ち目はなかったのかもしれませんね。やっぱりもったいない作品です。そう、小学校時代によく見かけた“もう少し”の桜型の判子を押したいほどに。



 王道というのは、日々生み出され陳腐になっていくものなのだと、この作品を通してあらためて痛感した次第でした。




今日はこれまで〜。近日中にアップできたらいいのですが、まだまだ纏まっていませんもので。上記の感想(?)を少しずつ盛り込んでいく所存です。まあエロゲーユーザーの一人の戯言として考えてもらって結構です(笑)。