先行ファンディスクのこと〜先日のエントリも含めて考えてみる〜

 先日『俺たちに翼はない Prelude』について筆を執ってみたところ、思わぬご指摘とかお叱りとかコメントを頂いてしまいました。あらためてそのエントリーを読み直してみますと、「あー、ちょっと厳しいこと書きすぎちゃったかな」と恥じ入るばかりです。
 もし、昨日のエントリみたいなことを公式の場で発言していたら、それは大問題になっていました。ですが、今回は個人的なブログの中で、これまた個人的な意見を述べてるだけなので、何ら批判されるような事はしてないと思います。



 とりあえず、このままにしとくのも色々とアレなので、フォローというか少し発展させた記事でも出してみます。実際取り上げてはみたまではよかったものの…………。データ自体があまりに少なすぎるので、信憑性に欠けてるかな、とびくびくしてたり。
 アニメまで広げればデータ自体はもっと集まると思うのですが、ゲームの商法はアニメの商法に適う、と言い切れるのかが疑問でして。それと私自身が、「何かをデータ化することにはそれなりの意味がある」と考えておりますからねぇ…。まあここらへんをご了承の上、以下もお読みいただけると幸いであります。






 さて、肝心の記事についてなんですが。
 端的に言って、先行ファンディスクに意味はあるのか。昨日のエントリーで書いた『おれつば』と『ef後編』がまだ発売されてない中での、「現時点における」極めて限定的なお話ですけども。要は、ここらへんの数字資料をヒントに何か分かる事があればと思い、調べてみたわけです。



 結論は、先行ファンディスクによって、求心力が低下するわけではない。しかし、そのFDによって本編の評価が高くなるとは言いがたく、むしろ評価は低く現れる場合が多い。





 ―――という事が言えます。今回は、ソースとしまして、2ch葱板選出 ベストエロゲー 1999〜2007rev:エロゲの販売数を用います。エロゲにおける売り上げと評価の格差のやり方を、ブランド毎に整理したような感じですかね。ただ、エロゲーの売り上げに関してはいろいろと不透明なところも多いので、資料自体が不正確と言ったら不正確かもしれません。そのへんもご理解いただけると幸いです。






では、データを見てみましょう。





表一 CIRCUS・先行発売作と本編

作品名 発売日 価格 売り上げ 売上-評価 批評空間データ 備考
アルキメデスのわすれもの 2001/12/14 4800 - - 166 -
D.C.〜ダ・カーポ〜 2002/06/28 初回9800 38525 -15 1017 -
最終試験くじらprogressive 2004/08/13 1500 - - 36 -
最終試験くじら 2004/12/28 初回9800 17468 -14 242 -
D.C.II 春風のアルティメットバトル! 2006/04/15 フリー - - 96 -
D.C.IIダ・カーポII 2006/05/26 初回9800 54881 -14 459 -
エターナルファンタジー プログレッシブ 2007/10/19 3000 - - 7 -
エターナルファンタジー 2007/11/22 初回12800 - -71 34 ※1

※1 げっちゅ屋2007年・年間セールスランキング=29位を使用。TG2008年3月号の売り上げ(11/16-12/15)=6位を記録。(葱板ベストエロゲー=154位)


表二 CIRCUS・他の作品

作品名 発売日 価格 売り上げ 売上-評価 批評空間データ 備考
Aries 2000/04/28 8800 - - 43 ※2
闇鍋Aries 〜明日への挑戦状〜 2000/09/29 初回6800 - - 5 -
Infantaria 2001/01/26 8800 14130 - 106 ※3
水夏SUIKA 2001/07/27 初回9800 23382 +25 800 -
D.C.WhiteSeason 2002/12/13 限定7800 15054 - 312 ※4
すくみず 〜フェチ☆になるもんっ! 2003/07/25 初回8800 14144 -68 127 -
終の館〜恋文〜 2004/02/27 1000 15955 -66 50 ※5
終の館〜双ツ星〜 2004/03/26 1000 10513 -30 32 ※5
ガッテーム&ジュテーム 2004/04/01 3000 - - 35 -
終の館〜罪と罰 2004/04/30 1000 7498 - 28 ※5
終の館〜檻姫〜 2004/05/28 1000 - - 26 ※5
D.C.P.C.〜ダ・カーポ プラスコミュニケーション〜 2004/05/28 初回9800 37928 -93 393 ※6
終の館〜人形〜 2004/06/25 1000 7783 - 35 ※5
水夏A.S+ 〜SUIKA 2004/09/24 初回7800 13205 -51 158 ※6
ホームメイド―Homemaid― 2004/10/08 - - - 43 -
すくみず2 〜泳・げ・な・い〜 2005/08/26 初回9800 10088 -23 34 -
最終試験くじらDepartures 2005/12/23 初回8800 - - 23 -
AR〜忘れられた夏〜 2006/02/24 初回9800 10536 -31 74 -
Circus Disk 〜Christmas Days〜 2006/12/22 初回4800 - - 48 -
D.C.II Spring Celebrationダ・カーポII〜スプリング セレブレイション 2007/04/27 初回7800 ※7 -30 84 -

※2 葱板ベストエロゲー=23位。ただし2000年度のデータ数は、以降と比較して圧倒的に少ない。
※3 PC-NEWS 2001年度年間セールスランキング94位。2003年度発売の『InfantariaXP』は62位=10686本。
※4 売上=デジクロ版データ。PC-NEWSのデータを入手する事ができませんでした。2003年度の通常版に関しては、PC-NEWS上で9676本(73位)。
※5 1000円のシリーズをフルプライスと同列にするのは、評価の目線が違いすぎるようです。参考までに、ということで。
※6 リニューアルということもあってか、ここに当てはめるのは無理がありました。データとして乗っけておきましたが、あまり意味のないアナライズになってしまっているかも。売上−評価は要スルー。
※7 げっちゅ屋2007年・年間セールスランキング=6位を使っています(便宜的)。(2ch葱板ベストエロゲー=36位)





注:『SAKURA 〜雪月華〜 花鳥風月プレミアムエディション』、『舞-HiME 運命の系統樹 修羅』については割愛しました。、同一線上に載せる事が難しい(評価データが18禁のそれと異なってしまうため)と判断したためです。同様に、先行版が存在した『ソルフェージュ 〜Overture〜』(工画堂=非18禁)に関しても調べてはみたのですが、資料が見つかりませんでした。

注:『D.C.〜ダ・カーポ〜』の例(はてなダイアリー)によりますと、系列作品は悠に10本を超えています。グッズが出れば必ず買う、といった購買層があるからこそ出続けるわけで、企業戦略としては理に適うのかもしれませんね。





◆CIRCUSさんは、ダ・カーポに連なる作品が多いこともあって、一概に評価しにくいです。しかし、先行作品を発売したからと言って、ブランド離れが急速に起こる事はないようです。ダ・カーポダ・カーポ2の間に多くのFDが出たにも関わらず、結果として2の売り上げの方が多いことからも分かります。
 ただ、『水夏』以外の作品は軒並み評価が伸びず、中でも先行ファンディスク付きの作品の話になりますと、売上よりも評価が低くなる場合が殆どでした。本数を出す割になかなか評価が伸びないのが、CIRCUSさんの特徴といえば特徴になってくるんでしょうか。
 






表三 minori・先行発売作と本編

作品名 発売日 価格 売り上げ 売上-評価 批評空間データ 備考
ef - First Fan Disc 2006/8/25 2500 - - 64 ※8
ef - the first tale. 2006/12/22 6800 40843 -52 280 -
ef - Second Fan Mix 2007/12/29 4800 - - 3 -
ef - the latter tale. 2008/05/30 未定 未定 未定 データなし -

※8 ソフマップザウルス1年間売上げランキング=21位。PC-NEWSにはデータがない様子。

表四 minori・他の作品

作品名 発売日 価格 売り上げ 売上-評価 批評空間データ 備考
BITTERSWEET FOOLS 2001/8/31 5800 - +65 120 -
Wind −a breath of heart− 2002/04/19 7800 22106 +25 458 ※9
そよかぜのおくりもの - Wind Pleasurable Box- 2002/12/27 5800 - - 91 -
はるのあしおと 2004/07/23 8800 20477 +15 521 -
Wind −a breath of heart−Re:gratitude 2004/11/05 7800 - - 75 ※10
ANGEL TYPE 2005/03/25 7800 - +50 85 -
さくらのさくころ 2006/03/31 6800 8693 -7 75 -

※9 売上=デジクロ版データ。PC-NEWSのデータを手に入れる事ができませんでした。
※10 「Wind通常版」、「そよかぜのおくりもの(CDパート)」、Windオリジナルサウンドトラック「Rustle」(音楽ディスクのみ)をひとまとめにしたパッケージが、『 Wind -a breath of heart- Re:gratitude 』です。リニューアルに近いかもしれません。





minoriさんは、ファンディスクを出さずとも、売り上げを上回る評価を得ていた場合が多いようです。
 『ef - a fairy tale of the two.』は元々分割作品なので、後編が発売されるまでなんとも言えないのですが、過去の作品を見る限りでは、基本的に本編が評価されれば、ファンディスクの有無に関係なく売り上げ以上の評価を得ていたように見受けられます。むろん、「確実にそう」という保障はどこにもありませんが。






論考

 ソースが完全に統一されておらず、また表のあちこちに穴がある事は否めません。よって、データとしてはかなりずぼらなのかもしれません。とりあえず、再度結論を先に述べる前に二点ほど……。




◆一点目。まず元となるデータ数が少ないので、表面的に出てくる情報に限界があること。

→推定とか予測とか「あやふやな境界を抜けきれない調査」であったことを、察して頂けると助かります。私もこういった数字の扱いに秀でているわけではございませんので、数値の桁がずれていたりタイトルが間違っていたりと、大なり小なり至らぬところがあるかと思います。ゆえに、データの扱い方・考え方に関しては一切を委ねますが、どうか「このブログが私個人の一意見を書ける場であること」はご理解下さいませ……。




◆二点目。先行ファンディスクの売り上げまで分かれば、もっと相関性が見出せるのかもしれないということ。

→なかなかその手のソフトが上位に上がってこないので、どうしても本数を調べる事が出来ませんでした。‘ファンディスク’や‘先行もの’の扱いを明確に出来ず、とくにイベントやファンクラブなどで販売されたものにつきましては、その実態を掴んでおりません。なので、「先行ファンディスク」にそれらを当てはめることは、今回に限っては避けさせていただきました。
 明確に「Prelude」とか予告編といった記述があるもののみ、別表にして分けたのはこのためです(もちろん認識不足は否めないわけですが)。それについてもご留意していただけると幸いです。





さて、ともかく再度結論を整理いたしますと、


◆先行ファンディスクが出たからと言って、大きな求心力の低下は見られない。しかし、そのFDによって本編の評価が必ずしも高くなるとは言いがたく、むしろ評価は低く現れる場合が多い(ただし全てがそうであるとは言い切れず、今後そうならない可能性はある)。



―――のではないかと。データ数が少ないこともあり、あまり突っ込んだ結論は述べられませんが、図表から少しでも何かを読み取ろうと努力するならこのくらいでしょうか。繰り返しになりますが、あくまで情報を集めてちょっと整理してみただけですので、これ以上は私のほうからはなんとも言えません。「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません」………という感じなんです。
 先行ファンディスクが発売された作品の一覧とかあれば良かったんですけど、この二つのブランドに絞ったせいで、他のところを調べきれませんでした。これに関しては、私の知識不足です…。
 今後表に付け加えるとしたら、『俺たちに翼はない』と『ef - the latter tale.』の売り上げと評価くらいです。データが蓄積されれば、また何か違ったものも見えるのかもしれませんね。





 以下、主としてファンディスクに対する私見っぽいものになってしまいますが。


 今回のPreludeに関して。待望の作品ということで、先行ディスクというのはファンの方にとってはそれ以上の価値があるのかもしれませんし、私も好きなものにはどんどん投資するほうなので、その気持ちは分かります。ですが、今回のNavelさんのファンディスクは、何度考えても高すぎると感じました。
 アンチというわけではありません。でも、ファンディスクというのは本編が好きだったから買うんじゃないかなあと思ったわけです。その作品を好きになるために買うんだったら、、、これはどうなんでしょう、と感じた次第です。うーん、まあここらへんはファンの方との温度差もあるかと思いますんで難しいところですね、ほんと。







おまけ

 昨日、求心力云々と書いちゃいましたが、それを確かめる最も確実な方法は―――

一.本編を買った人の中で、後に出たファンディスクを買った人は何人いるのか?

二.先行ファンディスクを買った人の中で、本編を買った人は何人いるのか?

三.ファンディスクを買わず、本編のみを買った人は何人いるのか?

こういったものを比較するしかないと思うんですよね〜。ただ、それを調べるにはどう考えてもサーベイが圧倒的に不足しているわけで。
 私が18歳を迎える前の話ですが、どっかの会社か何かがそういうことを調べてたと後から聞いたよーな気もします。まあ、今やってるとこはないでしょう……。始めの方に書きましたけど、こういう市場調査紛いのことをやる価値は、存分にあるんじゃないかと思いますね。





付・1〜10までの売り上げ総数合計

年度 本数
2000 587028
2001 549519
2002 427444
2003 510637
2004 567976
2005 579771
2006 426453


 2006年のデータがなかったので、勝手に計算して貼りつけてみました(いいんでしょうか?)。2002年と2006年の凹みがどうも気になりますね。上記の表二、四については、他社もいくつかデータ化してみました。これについては別記しております。


エロゲーの売上と評価の格差〜各ブランドの表 その一〜PULLTOP、Nitro Plus〜




……なんか最後までグダグダになっちゃいました。乱文に長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。





追記・・・売り上げ数・ベストエロゲーランキング共に、100位以下(人気投票で票が入っていない場合も含む)は-100として用いてます。なお、エロゲー批評空間のデータは、いま現在のものを参考にして挿入してみました(これは、ネットまでレビューを書きに来る人の総計ですから、あまり参考にならないかもしれません)。