驚天動地

 いや、驚きました。

 来年か、早くても今夏に発表すると考えていた作品が、急遽リリースされました。18禁ゲームではなく、『Narcissu-Side 2nd-』というフリー作品です。非常に著名な作品なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 さて、シナリオは元ねこねこの片岡ともさんで、原画はごとPさん。しかもCV(後藤邑子さんとは!)ということで……フリーゲームの割に、おそろしく豪華絢爛な陣営となっています。あと、音楽が素晴らしいんですよね。少なくとも、前作はそうだった。今作も期待大。


 前作でも、片岡氏本人は「実験的な」作品だと自評していらっしゃいましたが、“全年齢大人向け”と銘うたれている物語の方向性を私は見たい。エロゲーとは一線を画した、しかしノベルゲームというある種の共通性のあるジャンルにおいて、氏は、どんな答え(決して解答という意味ではなく、千差万別の考えと言っていいかもしれない)を出してきたのでしょうか。




「とにかく、どんな感じであれ
そう感じたならば、それがその人にとっての、
この作品の全てだと思います。
制作者である自分にとっては、
“眩しかった日のこと、そんな冬の日のこと”
が全てだと思っています。」



とは、前作の作外における一句。今作は、それを振り返ること六年。「眩しかった日、そんな冬の日」が訪れるには、それ相応の何かがあったのだろうか。仮にあったとしても、その間セツミは、一体どんな時を生きてきただろうか。彼女の物憂げな顔の影に、期待と不安を抱きつつ、プレイを進めていこう。


 現在から過去へという連関した流れに、私は往年の『みずいろ』の裏返しを認めてしまった。正直とても恥ずかしい。この作品は、そもそも枠など持ちえていないはず。先入観や過去の作品を視界に入れると、そのコンセプトは、白砂のように手から滑り落ちてしまう。プレイしている時だけでいい…、ただただ『Narcissu-Side 2nd-』だけを見つめていたいものだ。