2007年上半期におけるエロゲー界の考察(下半期も一部含む)

順位 ソフト名 ブランド
1 リトルバスターズ Key
2 君が主で執事が俺で みなとそふと
3 D.C.2 Spring Celebration CIRCUS
4 恋姫無双 〜ドキッ★乙女だらけの三国志演義〜 BaseSon
5 聖なるかな -The Spirit of Eternality Sword 2- XUSE
6 あかね色に染まる坂 feng
7 桃華月憚 ROOT
8 HoneyComing-ハニーカミング- HOOK
9 あねいも2 〜Second Stage〜 boot UP!
10 XrossScramble -TEAM BALDRHEAD Perfect Collection- 戯画
11 王賊 ソフトハウスキャラ
12 いつか、届く、あの空に。 Lump of Sugar
13 リリカル♪りりっく ま〜まれぇど
14 うつりぎ七恋天気あめ キャラメルBOX
15 幼なじみと甘〜くエッチに過ごす方法 アトリエかぐや
16 きみはぐ Frontwing
17 すくぅ〜るメイト ILLUSION
18 E×E ゆずソフト
19 ぴあ雀 カクテルソフト
20 借金姉妹 Selen
21 Chu×Chuアイドる The idol is a Vampire!? ユニゾンシフト・アクセント
22 だぶる先生らいふっ ALICE SOFT
23 姫騎士アンジェリカ〜あなたって本当に最低の屑だわ!〜 シルキーズ
24 EVE〜new generation X〜 TYRELLLAB.
25 プリミティブリンク Purple Software
26 リゾートBOIN Crossnet-Pie
27 恋する乙女と守護の楯 AXL
28 遊撃警艦パドペセル〜こちら首都圏上空青空署〜 May-Be Soft
29 ナツメグ コットンソフト
30 白銀のソレイユ −Successor of Wyrd≪運命の継承者≫− SkyFish

 TECHGIAN誌*1の売り上げデータを引っ張ってきたが、これを見て思うのは、大作は必ずしも良作ではないということだ。リトルバスターズのような「非18禁」レーベルの利点である門戸の広い作品はともかくとしても、3位の「D.C.2 Spring Celebration」に見られる曲芸商法や、7位にランクインした「桃華月憚」の致命的なバグ、キャラクターだけで歴史を売ったような「恋姫無双〜ドキッ☆乙女だらけの三国志演義〜」のパロディ、ユーザーをコケにしているとしか思えない「ぴあ雀」など、この頃のブランドにはプロ意識が欠けている節が多々見られる。


 また、ノベル志向の潮流にはまだまだ歯止めがかかっていない様子。ただただ「読ませる」ためのエロゲーが巷に氾濫し、「遊べる」エロゲーは鳴りを潜めているのが現状だ。「王賊」や「聖なるかな-The Spirit of Eternality Sword 2-」こそ比較的上位にランクインしているものの、それはSLGRPGの少なさを浮き彫りにしているにすぎない。これらの作品について、ユーザーが絶賛している場合が多々見受けられる中、やはりコンシューマ(ここではエロゲー以外のゲーム)との格差は未だその拡がりを露にし、深く刻まれた溝は埋まっていないと実感した。
 18禁ゲームユーザーの評価は、RPGSLGにおいてはことに甘い。「聖なるかな-The Spirit of Eternality Sword 2-」は、たしかに18禁ゲームとしては面白かったかもしれない。しかし、いま一度よく考えてから評定してみてはどうだろう。3年前の「永遠のアセリア-The Spirit of Eternity Sword-」からどのような創意工夫が凝らしてあったか、コンシューマ化前提で製作されてはいなかったか。…私は、これらの前提を抜きにしたレビューに「傑作」や「名作」の文字を見るたびに、ユーザーの甘さをひしひしと感じてしまう。我々が溶けた飴のような意識を改善しない限り、メーカーによる自発的な躍進はこれ以上は難しいように感じる。


 そんな中で、老舗アリスソフトがこの潮流に反発的なのはせめてもの救いではないだろうか。昨秋のこと、傑作との呼び声高い「鬼畜王ランス」がフリー宣言され、業界に衝撃を与えた事は記憶に新しいが、そんな老舗が低価格ソフトの製作を継続しているのは、こういった雑多なAVGの近況に警戒感を強めているからに他ならない。
 広義における18禁ゲームの認知度が、各メディアによって高められた現在、多くのブランドはアダルトゲームを作っているという誇りを失って、ゲームそのものを疎かにする傾向が見られるようになった。その結果が、短絡的な手法による移植の増加や、一時的な「萌え」をウリに生み出されたキャラクターたちの氾濫である。視覚的な技術は各種ムービーや各CGなどから分かるように明らかに向上した。しかし、ブランドのプライドは、それをはるかに下回っている場合も多いのである。


 セールスランキングに入らなかった作品の中にも、Tarteの「カタハネ」やNitro+の「月光のカルネヴァーレ」など、無視できかねる作品も少なからず存在した。現状のような、AVGの澱んだ泥流の中で宝石を拾うのは難しくなりつつあるけれど、ユーザーは、ノベルにSLGRPGにより多くを求めてよい時期なのかもしれない。それは、例えば遊べるゲーム(RPGだったりSLGだったり)に対する自身の目線を変えてみる、あるいは大作への認識を改めるなど、様々な方法があると思うが、いずれにせよ、古い残滓が固まりはじめた業界を一新する好期ではなかろうか。

 今冬から次年度上半期にかけて、期待値の高い作品が一同に集結する。上半期のような「不作」の印象を与えないよう、まずは各ブランドの健闘を祈りたい。

*1: もっとも、この雑誌ばかりを鵜呑みにするのも危険ではあるが、他にソースがないため準拠している。仲人口程度に聞いていただけると幸いである。