エロゲモラトリアム―エロゲーよ、何処へ行く―

 アクセス数が増加していた中で、5日も更新が途絶えてしまい恐縮です。コメントひとつひとつにお答えするのは時間的に辛いので、自分なりの見解や展望などを書いて、この記事に関しては一旦〆たいと思います。




 まずはじめに、ソース不足のお詫びをしておきます。今回の記事はあくまでも『TECH GIAN』誌の記事を典拠として執筆したので、これ以上踏み込んだ意見を書けませんでした。以下に連ねる記事も同誌と私的な偏見に基づいておりますが、それをご理解の上、お読みになると幸いです。また、ここまで記事が広まるとは思っていなかったので、私もいちコラムとしてネット上にアップしてしまった感があります。そのため、色々と説明不足があったことは否めず、読了して憤慨された方も多かったようです。この点につきましては、私の思慮不足にて大変失礼いたしました。今年度の作品が全て出揃った上で機会あらば、前年度あるいはそれよりも前の記事をソースとして用いつつ今一度詳考する所存でございます。




 あとは記事に対する見解とか今後の展望をいくつか。



 ユーザー諸兄諸姉がSLGRPGを求めていない事は、この記事へのアプローチからよく分かりました。ただ、求めるユーザーと求めていないユーザーの乖離は予想以上に広かった(反発される方が多かった)ので、総じてSLGRPGに対する関心の低さ(AVGに対する関心の高さ)を再実感した次第であります。今回の記事は、そんなAVGを主とした流れに幾許かの疑問を呈しておりますが、私自身は、なにも「SLGを多数派にしろ」とか「RPGこそエロゲーだ」とか、そういった極端な見解は持っておりません。月が地球の周囲を回る関係のように、AVGを中心にSLGRPGが回るという構図は今や絶対的なものと考えております。ただ、たまに出るSLGRPG(もちろん18禁レーベル)に対する評価が甘すぎるのではないか、という思いを拭い去る事が出来ないのです。


 これはLOCOさんへの返答が中心となりますが、SLGRPGが求められなくなっていく度に、「エロゲーにしては……」という括りはさらに存在感を醸し出し、いつの間にか「コンシューマよりも劣った」というニュアンスで用いられやすくなったのではないでしょうか。もちろん市場規模の違いから、エロゲーにおいてコンシューマを上回る作品が製作されるのは、それこそ奇跡的だと言わざるを得ません。ゆえに、SLGRPGを製作するエロゲーメーカーに対しコンシューマを上回る作品(ゲームシステムを中心に考えた場合)を期待するのは甚だ無責任な事ですし、私としても、kさんからご指摘を受けた「コンシューマをも超える完成度の作品」を求めているわけではないのです。よって、今我々がかけている「エロゲーにしては……」という抑止力の効いた色眼鏡を取ると、「このくらい頑張ってRPGを作っても評判が悪いなら、AVGにしよう」と考えるブランドが出てくる可能性は十分考えられます。

 しかし、ブランドがこう考えるようになってしまえば、AVGの氾濫はどんどん加速化し、結果的にエロゲーそのものが堕落の一途を辿るかもしれません。

 ところで、エロゲーにおけるSLGRPG(を主体とするゲーム)はAVGパートとの共存が絶対不可欠だと言えます。これは18禁であるが以上仕方のないことで、一つの作品中に両者が混在しないケースは非常に稀であり、エロゲ史を遡ってみてもそのような作品は数少ないと考えて差し支えないでしょう。下の記事で取り上げたソフトハウスキャラの「王賊」やザウスの「聖なるかな」は、SLGRPGパート+AVGパートのよき例となっています。しかし現有作品の大多数がAVG単体である以上、ユーザーも評価方法を画一化させ、AVG中心の評価形式を鵜呑みにしている現象がしばしば見受けられます。ユーザーが求めるAVG単体の読み物はこれで示しがつくかもしれませんが、AVG+SLGorRPGのゲームでもそういった実態があるとは感じられませんでしょうか? SLGRPG系列の作品におけるAVGパートを受動的に評価するのは、どうしてもAVG主体の作品と比較してしまうという背景があるのかもしれません。しかし、SLGRPGパートまでも受動的で“なあなあ”な評価をつけてしまえば、自ずとブランドの鋭気を挫くのではあるまいか、と私は考えています。



 つまるところ、私はこのことに懐疑的なわけです。
 例えば、りじんぐさん曰く「エロゲはつまらないから。パターンが一緒だから」とおっしゃってますが、この事は、多くのAVGが「読み物」としての機能しか果たさない現状を浮かび上がらせています。無論、AVGに求心力が備わっているうちは問題ないのかもしれません。しかし求心力を一手に集めるためには、「痕」や「Kanon」といった先駆者(指標)足りうる作品が必要になってきます。ところが、残念なことに最近の作品は今までの轍をそのまま踏んでいくものが多いわけです。今までは色々と先駆的な作品が生み出されてきました。しかし、近年そういった作品を見る機会は少なくなり、とりわけ読み物を作るブランドそのものの凋落が目立ってきたように感じます。そうやって現状から鑑ると、当の純AVGの勢力がこのまま持続するとは考えにくいのです。よく言えば「猶予期間」なのかもしれません。そのうち何らかの対策が必要になってくるのではないでしょうか(Leafなどはこの辺りを考えているようですが)。


―――では、どうすればいいか。


 この状況を打破する最も確実な方法は、求心力を再構築できるような「大作」をブランドが発信することです。しかし残念ながら、数年前から「大作は良作ではない」とよく言われているように、AVGを導引してくれるような作品は皆無と言っていいと思います。目に見えてブランドの凋落が進行し続ける以上、ユーザーが求めるのはなんら不自然なことではありません。もっとも、現在の状況に満足してしまっているユーザーが増えているのは否めませんが、同時にうんざりしているユーザーが増えているのもまた然りでしょう。


 私はそういった不満の一つとして、「18禁としては…」という定点から見た評価法に一石を投じさせていただきました。AVGの評価については、指標を設けやすいこともあって、多くのユーザーが自らの尺度を持っています。ところが、SLGRPGはそういった尺度の元になる作品が少ないため、たまに作品が制作されても「18禁としては…」という表現に落ち着いてしまう事が多いように思います。この評価では、いつまで経ってもステップアップしないので、結果的に全体的なレベルは上がらないんじゃないでしょうか。ユーザーがブランドに求めるのはAVGだけかもしれませんが、凋落状態にあるブランドが制作する読み物が増長傾向であるうちは、SLGRPGに「18禁としての基準」を設けたままでいるのは図らずともマイナスだと感じました。何か違った見方を試みない限り、全体的な停滞は食い止められないでしょうから。あまりに受動的すぎるのもどうでしょう。

 以前では考えられない老舗ブランドの凋落やクリアすら出来ないゲームの発売を目の当たりにすると、マンネリズムここに極まれりといった感があります。しかし、私事としてはもっと進展しつづけて欲しいと願ってやみません。


 さて、まとめもそこそこに一介のユーザーともあろう者がでしゃばり過ぎたようです。何れにしましても、エロゲーの行く末を少しでも心に留めていただければ幸いでございます。




 最後に。henahenaさん、hechoさん、いづるさん、ALTさん、mistralさん、774さん、kさん、wawawaさん、外神田3丁目さん、通りすがりさん、LOCOさん、りじんぐさん、ほかたくさんの方々。数々のご指摘やご感想、大変感謝しております。拙文にお付き合い頂き、まことにありがとうございました。



※同人について…ギャルゲーはともかく、同人とエロゲーを比較する事が果たしていいのかというと、そうは言えないような気がするんですよね。これは以前、他のレビュアーの方から指摘を受けた事がありまして。簡単に言うと、「自由度が違うから」だそうです。商業のほうは、様々な制約を受けて丸みを帯びた作品になってしまいます。対して同人はそういった制約が少なく、より鋭角的な作品に仕上がってくる。これは同人との大きな違い(“商業側のくびき”とすら言える)じゃないかと。だから、単純に「ひぐらしのなく頃に」などと比較するのは憚られました。